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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(あ)805号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人大橋茹の上告趣意について。

第一点は、単なる訴訟法違反の主張であって上告適法の理由にならない(所論追加控訴趣意第四点については、原審において弁護人島田隆信からも同様事実誤認の主張があり、原判決はこれに対し第一審判決挙示の証拠により判示横領の事実を肯認するに十分である旨判断を示しているのであり、また、右追加控訴趣意第五点についても、原審において弁護人島田武夫、同大橋茹から同様法令違反の主張があり、原判決はこれに対し被告人等の本件放火の所為は犯人以外の者が現に住居に使用する家屋を焼燬したものであって刑法一〇八条に該当すること明らかである旨判断しているのであって、実質的にはいずれも判断を与えている)。

第二点は、事実誤認の主張に帰し上告適法の理由にならない(刑法一〇八条にいう「人」とは、犯人以外の者を指称すること所論引用の大審院判例の示すとおりであるが、原判決の維持した第一審判決が「現に加藤シマヲ等の住居に使用する住宅及びこれに接続する工場を焼燬させ」と認定している「等」というのは、加藤ハマ、加藤喜一郎、加藤義隆を指すこと記録上明らかであるばかりでなく、加藤シマヲを以て不作為の放火犯であるとする所論の肯認し得ないことも亦原判決の示すとおりである)。

弁護人島田武夫、同島田徳郎の上告趣意について。

第一点は、憲法三八条違反を主張するけれども、所論の被告人等の司法警察員並びに検察官に対する各供述調書は捜査官の暴行、脅迫及び詐術によりなされた任意性のない供述を録取したものであるとは認めることはできないとした原審の判断は記録上これを覆えすに足る資料を発見することができないから、所論違憲の主張はその前提を欠き上告適法の理由にならない。

第二点及び第三点は、判例違反を主張するけれども、その実質は加藤シマヲを本件放火の共犯と認めなかった原判決の事実誤認を主張するに帰するのであって、いずれも上告適法の理由にならない。

本件については、なお、記録を調べても、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三九六条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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